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文化財的な価値。 国産「天然スレート」屋根のリニューアル工事

カテゴリー :  施工事例

関西から工事依頼を頂きました。「白く変色した屋根を元の色に戻したい」とのご依頼でした。

正直、現場調査させていただいた段階で「この屋根がどういうものか?」わかりませんでした。

「石材には違いない」が「錆が出ている」。塗装と言っても「色をつけるわけにはいかない」。

「割れ」や「欠損」の補修方法はどうするか?

 

不織布研磨ブラシで表面をこすり、水で濡らしたところ「濡れ色」に戻ることが判明しました。

すなわち、この石材に適応したクリヤーコーティングであれば「ご要望に応えることができる」と思いました。

欠損し、落下した現物を1枚お借りして研磨して色を確認しました。

この石材が「天然スレート」であることも判明しました。

 

インターネットで買える「スペイン産の天然スレート」を取り寄せて比べてみました。色は天然スレート独特の色で共通ですが、風合いと厚みが異なります。

欠損の補修に使うには不安が残ります。

 

 

 

国内では唯一、石巻が天然スレートの産地であるとわかり、石巻の取引業者様に調べていただいたところ

国産天然スレートは国内文化財の屋根に多用されていて、それらを手がけた職人さんにだ会うことができました。石巻へ出向き、現場写真を見ていただいたところ「しっかり施工されていて、メンテナンスを行って維持すべき建物」という評価をいただき、文化財修繕に使用されている天然スレートを譲っていただけることになりました。(石巻の天然スレートは震災の津波で工場が被災して生産できない状態が続いています。ゆえにたいへん貴重な資材を譲っていただいたのです。)

 

国産の天然スレート:工法「3枚重ね葺き」 厚み、風合いが一致しました。

 

 

着工して、研磨ブラシの選定を行いました。凹凸ある形状なのでサンドペーパーなどは使えません。

複雑な形状にフィットする「不織布ブラシ」「ワイヤーブラシ」で行うことになりました。

 

 

研磨が終わり、高圧洗浄中の状況です。研磨によって色が少し濃くなったのがわかります。

白くなった原因:推測しかできませんが、何らかの保護コーティングを行って経年劣化で白化したと思われます。研磨しても浸透しているため凹部分が特に白いまま残ってしまいました。

 

錆は天然スレートに含まれている「鉄分」です。経年劣化で「錆」となり水分を吸って爆裂したようになっていました。

石材用の錆除去剤で洗浄して爆裂部分をシーリング補修しました。(錆は内側から発生しているので除去は困難でした)

 

欠損していた部分(部材が残っている部分)は欠損部分に「ステ板金」を差し込み、点付け接着しました。

水が抜ける隙間を確保するためにパッキンを挟んでいます。

 

 

欠損して紛失した部分には石巻の天然スレートで補修を行いました。

欠けている部分は形状にカットして接着、抜けている部分は「ステ板金」を差し込んでから接着しました。

 

 

部分的に試験施工を行いました。乾燥後、付着不良がないことも確認しました。

 

いよいよ本施工です。

塗料メーカー各社と協議しましたが石材の屋根にコーティングできるクリヤーはありませんでした。

ミヤキ(石材のメンテナンス資材のメーカー)で発売している石材の保護コーティング剤が使えることがわかり採用しました。

ガリレオ(ヒートレスガラス)は石材の表面にガラスのような膜を作るコーティング剤です。

1回塗りで薄く浸透させる塗材で2回塗ることはできません(不具合を起こします)

浸透させるため、ローラーが使えず、1枚1枚丁寧にハケ塗りで施工しました。

 

天然スレートの屋根:今回は貴重な施工をさせていただきました。

ガリレオによるコーティングは永久的なものではなく数年単位で新たなコーティングが必要です。

今後も引き続き、メンテナンスをさせていただたいと考えております。